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ランディさん①
久しぶりに、田口ランディさんのblogに行ったらば、
ココロが、ドキュン!と打ち抜かれて、ふるふるっと揺れて、
最後は温もりに包まれました。

どうしても書き留めておきたい、と思ったのと、
ここを訪れてくださる方(アリガトウ!)とシェアできれば、と思ったのとで、
ランディさん敬意を表しつつ、ここに転載させてもらいます。


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みよのさんのお芋。

みよのさんから、突然電話があった。
「北海道のふかざわだけど、覚えてる?」
「あーみよこさん!」
「みよのだけど」
「あ、そうだ、まちがった、ははは」
みよのさんは、北海道の浦河町に住んでいるアイヌの女性で、
ずっと前に浦河べてるの家に行った時に知りあった。
べてる祭りの時だったかな、
浦河の保存会の人たちがアイヌの踊りや歌で歓迎してくれた。
その時、みよのさんの踊りは、すごかったんだ。
どういうのかな、風の精みたいに見えた。
それで、声をかけたのがきっかけ。
みよのさんと一緒に山に入っていろいろ話をした。
みよのさんはすごく元気で、背は私くらい小さくて、飛ぶように山道を走る。
自分では「私はへそまがりで憎まれものだから」と言う。
確かに口は悪い。
ものすごく辛辣で、つまり正直ってことだ……。
どれくらい会っていないだろう、五年、いやもっとかな。
たった一度、会って、二回くらい手紙を書いたかもしれない。
「あのさ、今年、ものすごく芋がたくさんとれたんだよ」
「へえ?」
「送るからさ、あの神奈川の住所でいいんか?」
「え、ああ、ほんと?うれしいなあ!」
「もうもうそりゃあたくさんとれてさ、うちの芋食べたらほかのは食べられねえから」
「楽しみだなあ、でも、なんで突然、思い出してくれたの?」
「いっつも、首飾り見てなんかお礼しなきゃなあ…って思ってたんだよ、
 芋を送ろうと思っていたんだけど…いろいろ忙しくてさ。
 今年はいい芋がとれたから、よっしゃ送ろうと思ってさ」
「そうかあ、うれしいなあ。私もね、いつもみよのさんのこと思い出してたよ」
「なんで?」
「なんでって、みよのさんの歌と踊り、かっこいいなって思ったから」
「私はうまくないよ」
「そうかな。でも私にとっては、すごくすてきだったんだよな。
 むっくりもつむじ風みたいだった。魂を感じた」
「あんた元気でやってんの?」
「元気だよ。みよのさんは?」
「元気だけど、もう年だからな。
 でも、歌ったり踊ったりしないと生きていけないから。なにかあると歌ってるよ」
「そうかあ…」
「あんた、福島とか東北に知りあいとかいる?」
「え、ああ、いるけど…なんで?」
「芋、送りたいんだよ。わたしは知りあいがいないからどこに送っていいかわからん。
 あんたの知りあいのとこに送るから住所をさ、手紙にしてよ」
「わかった、きっと喜ぶと思うよ」
「あのさ、寒の水って知ってる」
「寒の水?」
「1月の9日過ぎのころを寒っていうだろ、その時期に水をためるんだよ。
 そうすると寒の水はよ、一年経っても腐らないんだよ。
 昔からの言い伝えなんだよ。
 だから、来年になったらあんたは寒の水をタンクにためておきな。
 高い金だして水買うことないから、
 わたしも寒の水、貯めておいといたけど、一年経っても普通に飲める。
 だからいっぱい貯めてあるよ。
 米もな、玄米にして大目に貯めておきな、
 そしたらなんかあった時、周りの人も助けられっから…」
「うん…」
「まだ、これから大変なこと起るから、ちゃんと準備しとかないと。
 なんかあったとき、地震で亡くなった人たちが浮かばれないだろう?
 自分たちが最初に犠牲になって、これから起ることを教えてくれてんだからなあ。
 そう思って、準備しとかなきゃ申し訳ないだろう」
 みよのさんは、そう言って、
 無駄になるかもしれないけど今年は米を200キロ買ったと言った。
 そうしたら、近所の人たちにも分けてやれるからさ…と。

みよのさんたち、絶対に自分のことだけ考えないんだよなあ。
ほんとうにお金なくて質素な暮らしぶりなんだけど、
芋がたくさんとれたら分け与えたいと思い、
災害の備えは近所の人のことも考えて行うんだ。
人と人は互いに助け合っているから生きていらる。
人間は一人じゃ生きられない、
その考えはアイヌの人たちにとってはあたりまえのことで、
自分のことだけ考えていたらいつか死ぬと思っている。
でも、そういう発想がわたしにはない。
自分の家族だけがなんとかなればいいと、私は思っている。
それなのに、みよのさんはこんなに遠くに離れている私のことも思って、
一生懸命に何かを伝えてくれようとしていた。

「なんか偉そうに説教しちゃってごめんな!」
そう言って、がはははは!って豪快に笑って、じゃあね、と電話を切った。
たった一回だけ会っただけなんだけれど、
私はみよのさんを絶対に忘れないし、時々思い出していた。
人と人の繋がりってなんだろう。
誰とでもというわけにはいかない。
時空を超えて結ばれ合う人はごくごくわずかだけれど、確かにそういう人がいる。
みよのさんのお芋が届くの、楽しみだな……。

(田口ランディ「いま、伝えたいこと。」2011.11.15 より)

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01/15 15:30 | 「想」
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